金属イオン抗酸化処置

没食子インク(Iron-gall ink)など、一部のイメージ材料に含まれる金属イオンは酸化触媒作用などにより紙を腐食させ劣化させます。化学的な処置により、この腐食を抑制する研究と技術開発が世界的にすすめられています。
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金属クリップの腐食。
 
没食子インクによる腐食。
 
没食子インクによる劣化。
 
没食子インクによる文字の移行。
 

用語説明
●抗酸化処置
ここでは、没食子インクの成分である鉄イオンの酸化を抑えるための処置のこと。
●没食子インク(Iron-gall ink)
ブナ科ナラ属の樹木の若枝に寄生した、インクタマバチが作る虫こぶから作られたインク。




脱酸性化処置

水性脱酸法、非水性脱酸法などにより、紙の中の酸を中和した後、アルカリ物質を残留させ、紙の劣化を防ぎ、遅らせる処置です。
支持体である紙やイメージ材料の種類、状態によって、溶液の溶質と溶媒、濃度は変えて処置がおこなわれます。処置方法も、浸漬・噴霧・塗布のいずれか、あるいはこれらの組み合せによっておこなわれます。この処置により紙のpHは、元の酸性域から弱アルカリ域へと向上します。 少量のアルカリ塩は多くの紙の寿命を延ばすことに貢献すると考えられますが、シアノタイプ(ブループリント)や没食子インクで書かれた資料などの一部の資料や色材には、アルカリに接するとすぐに、あるいは徐々に変化するものがあり、資料にあわせた適切な判断が必要です。
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pHチェック。電極法にて測定。
 
pHチェック。pHストリップにて測定。
 
塗布法。
 
本などの構造物はスプレーによる非水性脱酸処理(ブックキーパー法を含む)を施す。
 

用語説明
●水性脱酸法
炭酸水素カルシウム水溶液・炭酸水素マグネシウム水溶液などで行う脱酸性化処置。
●非水性脱酸法
水酸化バリウムメタノール溶液・ブックキーパー法(酸化マグネシウム微粉末噴霧法)などがある。
●溶液の溶質と溶媒
溶液成分のうちの溶かしている成分を溶媒。溶けている成分を溶質という。

●pH
水溶液中の水素イオンの濃度。0〜14の数字で表され、pH7を中性、pH0を強酸、pH14が強アルカリ。

●シアノタイプ
(ブループリント)
設計図面などの青色の紙に白い線で情報が映し出されている種類のもの。




紙力強化

水害・虫害・黴害などにより、紙力が著しく低下している場合には、ごく少量のセルロースエーテル類を資料に含浸することで紙力を強化します。酸性劣化などで、紙力が衰え、利用が困難な資料には極薄い紙繊維で裏打ちや表打ちをおこないます。
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劣化し脆くなった紙。
 
紙繊維での表打ち。
 
セルロースエーテル類の塗布。
 
セルロースエーテル類による浸漬。
 

用語説明
●裏打ちや表打ち
傷みのはげしい資料の補強のために裏・表面から和紙などで補強する方法。






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