修補

使用する主な材料は、修補用の紙と接着剤。修補用紙は和紙(楮紙、三椏紙、雁皮紙)、パルプを用途によって厚みの違うものを使い分けます。あらかじめ用紙としての物理的強度と化学的な状態(pH等)を調べ、pH等の調整が必要な場合には中和やアルカリ・バッファー処置を行って用紙を作ります。接着剤はデンプン糊(生麩糊)、メチルセルロースのみを用い、溶媒としての水も脱イオンとpH調整がおこなわれます。
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火災のため一部消失した資料。
 
左記資料の処置後。
 
貼付資料の再貼付。
 
総裏打ち後。
 
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処置前。
 
処置後。
 
虫損により損傷した資料。
 
左記資料裏打ち後。
 

用語説明
●楮紙、三椏紙、雁皮紙
日本古来の靭皮繊維を使用した紙。いわゆる和紙。
●アルカリ・バッファー処置 アルカリの緩衝剤を定着させる処置。


資料が冊子形態の場合、元の製本が不適切な場合や処置のため解体をしなければならない場合、両者とも基本的には再製本されます。再製本は修補と同じく化学的に安定した材料が使用され、解体前と同じ方法で同じ形式でなされるべきでありますが、オリジナルの製本が今後、劣化の要因になる場合や、利用のさまたげになる場合があると考えられるときには所蔵者との相談の後、変更をすることがあります。
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処置前。
 
処置後。
 
綴じに無理があり破損した資料。
 
本の開きに無理のかからない形態へと再製本する。
 





リーフキャスティング

水に拡散させた紙繊維を資料の欠損部に流し込み、資料の下方から強制吸引することで欠損部に紙繊維を集め、補填するという方法です。厚みのある冊子資料や両面書きの資料など、その欠損部に適量の紙繊維を充填させることから資料の厚みがほとんど変わらず、資料に書かれているイメージを隠すことなく欠損部を補填することができます。充填する紙繊維は楮、三椏、雁皮、パルプなどを資料にあわせて種類や繊維の長さを選択し、ときには調合して使用します。リーフキャスティング方式には、吸引式と水頭圧式の2種類があり、前者は吸引装置で下方から吸引する方法で、後者は大小の水槽の水頭差圧からうまれる吸引力を使用する方法です。それぞれの長所があり、対象とする資料の状態により使い分けられます。
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リーフキャスティング装置(吸引式)
 
書籍の1ページへの処置。
 
処置後。
 
リーフキャスティング装置(水頭圧式)
 
用語説明
●吸引式
吸引装置を利用して、下方から吸引する方法。
●水頭圧式
入れ子状の大小の水槽の水頭差圧を利用し、吸引力を生じさせ、それを利用する方法。






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